第3話

「彩葉ー!!起きなさい、入学式に遅刻なんて許さないわよっ!」

うるさいなぁ…。言われなくても分かってるよ。

もぞもぞと、ゆっくり動き始めた。すると、足音がどんどん近付いてくる。

そして、扉が開いた。

ーバンッー

「彩葉っ!!」 

「分かってるって!朝からトーン高いんだよ、乃々花ちゃんは」

私がそう言うと、乃々花ちゃんは、

元々ツリ目の瞳を更に鋭くさせた。

私が、即座に立って「ごめんなさい」と謝ると、途端に乃々花ちゃんは、笑顔になった。

「速く制服に着替えてきてね。渓くんが朝食作ってくれたから」

「うん…」

返事をした時の私の顔は、確実に作り笑顔だったことだろう。


乃々花ちゃん、そしてさっき会話に出て来た渓くんは、私の家族ではない。

この家に住むカップルで、私が居候しているこの家の主だ。

渓くんとは、幼い頃からの付き合いで、

中学卒業と同時に家出した私を住まわせてくれている。

乃々花ちゃんは、中学の頃から渓くんと付き合っていた関係で、妹の様に可愛がってくれている。

私の親代わり同然の人達なのである。

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