第64話

「えっえっえっ!」


「大丈夫ですよ、俺以外いませんから」


それはそれでまずいではないか。


「あのーココア!大丈夫!私!帰るから!」


急いでベッドから降りようとした。


けれど、くらりと眩暈がした。


「おっと」


思わず天王寺くんに身体を預けた。


ーこの温もり…私…。


天王寺くんの顔を見上げる。


「莉音さん…?」


綺麗な顔がそこにはある。


ー私、私は…。


昔見たシンデレラの絵本。


綺麗なプリンセスが王子様と踊るシーンが好きだった。


ー私が、あのプリンセス?


見つめていた天王寺くんの顔から視線を落とす。


彼が支えていた腕をそっと押し返した。

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