第58話

「ちょ、あのさ、シンデレラって絵本の中の話だよ?なに言ってるの?」


やっと会えたプリンセス。


そう思ったのは俺だけだった。


ーそうだ…魔法は俺だけにかけられたんだ。


悔しい?悲しい?


この感情はなんだ。


目の前にいるのは愛しい人の生まれ変わり。


なのに、俺のことを怪訝な目で見てくる。


あんなに頬を染めていた彼女はいなかった。


「う…!」


淡々と事実を告げていた時、彼女は突然倒れた。


「莉音さん!!」


間一髪で支えた身体は、間違いなく好きでたまらなかった彼女の熱と同じ熱を帯びていた。

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