第35話

「素敵…こんな場所があるなんて」


神話のような造りの橋と綺麗に整備された川、植物たちを見て彼女の目がキラキラする。


「ここは、僕の秘密の場所です。ここに来ると落ち着くんです」


「そうなんですね」


ワルツの音が聞こえてくる。


「もう一度、踊ってくれませんか?」


「…はい…」


少し照れながら、俺の手を取る彼女。


何度もひるがえるドレス。


見つめてくる瞳がさっきよりも熱を帯びていた。


君も同じ気持ちでいてくれたらいい。


そう願って踊っていた。


「あの…君の名前はー」


ゴーンゴーンゴーン


12時を知らせる鐘が鳴った。

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