君を探して

第30話

ガラスの靴が目の前で割れた。


大切に持っていたもの。


それはいとも簡単に割れてしまった。


トレメイン夫人が大臣に足をかけたのは見えた。


見えていたのに。


まるでスローモーションのようにガラスの靴はパリンと割れていった。


絶望。


それが、俺が感じたことだった。


「お引き取りください」


そう言われて、呆然としていた俺は何もできず城へ戻った。


ー結婚しろー


「黙ってください!俺は…俺は…!」


彼女しか愛せない。


いつしか、王国中に俺の噂は様々に広まった。


ー人を愛せないのか。

ーこの国を考えていない。

ーわがまま王子


ー最低な王子ー


俺は、国のためにという大義名分で、彼女を諦めなければならなかった。

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