第29話

「そんなの、シンデレラなんておとぎ話の世界の話だよ」


「おとぎ話になったんですね、今では。けれど、遠い昔、私と莉音さんは会っているんです。12時の鐘が鳴るまで、舞踏会で」


「舞踏会…?」


「貴方はガラスの靴を片方落としました。そして、ずっとそのガラスの靴を落とした女性を探していたんです」


ドクン。


そう、誰かが私を探していると話していた。


王子様が、私を。


いつか、来ると思っていたのに。


「ガラスの靴は、ある夫人によって割られました。そのあと、夫人に私たちは追い出されました」


ドクン。


ーお継母さま…!開けて…!お願い…!ー


ーここにはもう娘はおりませんー


ーいや、お継母さま…!お継母さま…!ー


ーお引き取りください。私の娘たちには他の縁談がありますのでー


ーこれが、恋だったと思ったのに…王子様…ー


誰かが、ドアの前で泣いている。


ー貴方は誰…?


ー金髪の、水色のドレスの貴方は…?


「莉音さん!!」


私はまどろみの中、もう一度意識を手放した。

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