第85話

「稜、これはお前が、お前達が『ミユ』から抜け出す為のきっかけだ。

 その先の道は自分で見つけろ、良いな?」

「…あぁ、分かってる」

「じゃあ話すぞ、俺が知っている『ミユ』関連の一番大きな話だ。

 というか、これ以上にお前達に必要な話はないだろう」

ゴクリ、と稜が唾を飲み込むのが分かる。

が、ここで引き下がるつもりはない。

俺は2人しか居ない静かな空間で、その言葉を口にした。




「『ミユ』はもう居ない。幾ら探しても、絶対に見つからない。

 だからもう、『ミユ』を探そうとするな」




◇◆◇◆◇◆


『◯◯ちゃん』


誰かが、私の名前を呼んでいる。


振り返れば、私の大好きな色を持つ人が居て、


駆け寄った私を宝物の様に大切に抱き締めてくれる。


その腕が好きだった。


ずっと、その腕に抱かれていたかった。


そんな日々が続くわけがないと、ずっと昔から分かっていたけど。


妄想するくらいなら、許してもらえないだろうか。


『ねぇ、大好き。


 だから、私から離れて行かないで』


嘘でもいいから、肯定して。


今だけでも良いから、そう言って。


それだけで、きっと私は満たされるから。


私を迎える地獄の中でも、きっと頑張れるから。


ねぇ、誰か、私の、私のお願いを、聞いてくれない?


◇◆◇◆◇◆

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