第81話

「あなたも『翡翠』に居るなら知っている筈よ。

 私、『ミユ』に似てるんですって。それが理由で良くして貰っているの」

「良くして貰ってる?お前が『ミユ』なはずないだろ?

 それだけが理由だと思えない、他にも理由はある筈だ。

 そもそも俺達を捨てた時に傍に居た男はどうしたんだよ」

「あぁ、あの男?死んだわよ、5年くらい前にね」

「…それで?」

この女と会話をしている事実すら信じたくないが、情報は多い方が良い。

どのみち捕らえる事になるだろうし、今の内に出来る事はする。

「私はあの時絶頂だったのよ。それなのに、彼を殺した人が居るの。

 最高の人生をぶち壊しにしてくれた奴が居るの。絶対に許さないわ」

「それがどうして、『柘榴』と繋がるんだ」

「だって、彼を殺したのは当時この辺りで

 『柘榴』と関わりを持っていた…『ミユ』張本人なんですもの!」

理解が追いつかなくて、頭が痛くなってきた。

雫が知る『ミユ』は、一体どんな存在なのだろうか。

柊月 稜が探す『ミユ』はどういうつもりでその男を殺したのか。

分からない事だらけだが、今は動かないとならない。

「…誰か来い、この女を気絶させて拘束する。

 終わったら顔が見えない様にして雄大のもとに連れて行け」

「はいっ」


「……なんなんだ、『ミユ』って一体何なんだよ。

 俺達を振り回す女はコイツだけで充分なんだよ…!」

俺の怒りの言葉は、喧嘩の喧騒に負けて、誰にも伝わらなかった。


◇◆◇◆◇◆


「…話は済んだか」

「待っててくれたんだ、優しいなお前は」

俺はいつもと変わらない様に言葉を口にした。

「……情報を寄越せ、お前が俺に出来る事はそれだけだろ」

「勝手に決めないで貰える?俺が持つ情報の価値は俺が決める。

 お前に簡単に渡すかも、俺が決めることだよ。それも分からない?」

睨む彼を見据えながら、彼と出逢ったあの日のことを思い出した。

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