第79話

『突っ込め、斎達の邪魔をさせるな!』

巡の声に呼応する大きな声が耳で響く。

『怪我人は直ぐに下がること、状況によって予備戦力として出すよ』

『こっちは問題なし、人っ子一人居ないね。

 このまま稜を探す。今のところ誘導は要らないよ』

巡に続き、雄大、雫の声が聞こえる。

「了解だ、連絡は一旦断つ。なにかあれば直ぐに連絡を寄越すことだ」

「おい、斎!もう行っても良いか!?」

「あぁ、後ろは気にするな。俺が警戒しておこう」

先行する凌駕の後を追いながら俺は考える。

こちらが万端の状態で決行したとはいえ3日間の猶予があった為、

相手に準備が足りないとは限らない。

俺達も油断をしてはならないだろう。

『…はっ?!なんでお前がここにっ?!』

『巡?!』

「おい、どうした?!」

『ッ、気にするな!これ個人のことだ!』

雄大と凌駕の声に反応して巡にしては珍しい大声が聞こえる。

『でもッ!』

『なにかあったなら雄大を呼ぶから!!』

『え……』

『お前は俺の兄貴なんだろ?!直ぐ来なかったらぶっ飛ばす!!』

『っ、分かった!!』

藤代の絆を感じ、思わず俺は笑みを零す。

「巡のもしものことがあれば雄大が動く、良いな?

 他は動かない、これは絶対だ」

巡と雄大からの返事はないが、構わない。

凌駕を見つめると渋々頷いてくれた。

「雫、お前も良いな?」

『……』

「雫?」

先程から返答のない雫の名を一度呼ぶが、反応がない。

もう一度呼んでも返事はない。

『雫!!』

『……なに』

ようやく返ってきた声は随分と低かった。

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