第75話

「決行は3日後の深夜。内容は簡単、アイツらの根城に突っ込む。

 主に行動するのは俺と雫、凌駕だ。雄大はバックアップを、

 巡は下の奴等の指揮と誘導を頼む」

『了解』

雄大と巡の声が重なる。

「斎、雫を暴れさせるなら俺等と雫は別行動で良いんじゃねぇか?

 その方が雫もやりやすいかもしれねぇぞ」

「…そうか?雫はどうだ」

「どっちでも構わないけど、稜とは話したいこともある。

 可能ならふたりきりにでもして欲しいところだ」

千咲都に連絡するつもりか、席を立った雫。

自分の仕事以外に気になることはないらしい。

「分かった、そうなる様に他の幹部連中を誘導しておこう」

「誘導する必要はないかもしれない。

 稜は俺が居ると分かれば他人を排除するだろうから」

「それで良いのか?」

「うん、万が一誘導する用意をしておいて欲しい。

 必要なら合図をすると思う」

「分かった、把握しておこう」

雫と斎が言葉を交わすのを最後に、『柘榴』の話は終わった。


◇◆◇◆◇◆


「…まさか、君の方から俺を訪ねてくるなんてね。

 どういうつもり?心変わりでもしたの?でもそういう性格じゃないよね」

紅い瞳にじっと見つめられて、思わず唾を飲み込む。

「…別にそんなんじゃない。雫の件で話があっただけだ」

「あぁ、成程。レンくんはしぃくんの事でしか動かないもんね」

自分の人のことを言える立場にはないが、彼は度を超えている。

自分がその理由を知る数少ない人間であることを知っているから、

躊躇いなくそれを口にする。

「…恭?」

「あれ、霧亜(きりあ)起きちゃったのか。望愛(みあ)は?」

奥から聞こえてきた声に振り返ると、そこにはひとりの女性が居る。

「まだ寝てるわ。

 あ、こんばんはレンさん」

「…あぁ、久しぶりだな真壁…いや今は清南か」

霧亜が声を掛けると微笑みながらそう返すレンくん。

釣られて俺も霧亜も笑った。

「それ、わざとでしょう」

「良いだろう、別に。

 年上の俺より早く結婚されたんだ、意地悪もしたくなる」

そういう子どもみたいなところが一切変わっていなくて、安心した。

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