第72話

雫の言葉に驚いた俺達は、そのまま雫の話を聞く。

「綾瀬のOBだったし、確かその代のリーダーとかだったと思う」

「まさか、あの赤髪はその時の…」

「名残だな。俺が気にしないって言ったら染め直すのも面倒だし

 気に入ってるからそのままにしたいだってさ」

そっちの道を進んだ奴だと分かっていたとはいえ、

そこまでの存在だとは思わなかった。

「アイツを使いたいなら使っても良い。俺から口添えはしないけど。

 愛流は面白いこと好きだから、案外ノッてくれるかもしれない」

既に千咲都 愛流に通話が繋がったスマホを投げられた斎は、

暫く考えて、千咲都との会話を始めた。


『あぁ、別に良いよ。協力くらいしても全然構わない』

「良いのか?」

『うん。今の『柘榴』の頭…柊月 稜は最近暴走気味だからな。

 OBとしてはそろそろ痛い目見て頭冷やせとは思ってる』

「…本音は?」

『あの程度のクソガキが雫様に迷惑かけてることに腹が立って仕方がない。

 許可があれば俺自身が直接お灸を据えに行きたいところだ』

「それはダメ。

 『柘榴』は俺の玩具になって貰うから取るな」

斎と千咲都の会話に割り込んだ雫のセリフは、

一見子どもがおもちゃで遊ぶ様なセリフで『柘榴』の連中が気の毒になる。

『分かってますよ、それくらい。

 …それに、雫様が直接言わないと、稜は信じないでしょう?』

「分かってるなら良いよ。じゃあ、その件はよろしくな」

『はい、雫様』

斎の返事を聞かずに、その通話は切れた。

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