第71話

感情の分からない人間だからこその疑問は、単純で残酷なものだった。

雫の様な人間に『楽しいから笑うんだ』と説明したとして、

『何故楽しいのか分からない』と言われる様な気がした。

「りょーが」

「…雫?」

「勝手に読むなよ。人によっては不快感を得ることになる。

 防がなかった俺も悪いけど、気をつけろよ」

「…あぁ、分かった」

信用に値しない相手には容赦なくこの力を使ってきた俺だが、

雫にこう言われればどうしてかその言葉に従ってしまう。

「ねぇ、雫くん。

 『ミユ』の情報ってさ、どのくらい持ってるの?」

『柘榴』が探し回っているという女。

今までそんな情報で回ることはなかった。

俺がさっき『柘榴』の奴の心を読んで分からなかったことは、

『ミユ』の情報を持っている可能性がある雫のことを捕らえろという話。

捕らえることまでは分かったが、その理由まではあいつらは知らなかった。

「あー……まぁ、全部じゃない?

 この世で『ミユ』について一番知ってるのは俺だし…」

首を傾げならがそう呟く彼は非常に絵になる。

「人間嫌いの雫にしては珍しいな」

「何が」

「そこまで他人のことを知ってるなんて」

「知ってなきゃいけない立場だっただけ。知りたかった訳じゃない。

 あの女は普通じゃない…ま、俺が言えた口じゃないけどな」

その後これ以上話す気はない、と彼は強引に話を変えた。


「決行をこっちで操作したいところだな。

 あっちの準備が整う前に始めて終わらせたい感じ」

「それ賛成。出来るだけ早く片付けよう」

雄大と巡がそう意見する。

「それならウチの愛流を使おうか?

 アイツ一応元『柘榴』のメンバーだぞ」

『は?!』

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