第69話

「お前達の頭である柊月 稜(ひづき りょう)は、

 ある少女を探している。その少女の名は『ミユ』というが、

 お前達はそれ以上何も知らず、その少女を見つける為だけに、

 『翡翠』を倒せと言われている。加えて、その少女を見つけるてがかりに

 なるであろう人物、つまりは俺だ。俺を捕らえて連れて来いと言われている」

雫の言葉を聞きながら、『柘榴』の連中は青褪めていった。

その様子から見るに図星なのだろう。

内容はそもそもこいつらの脳内を『読心術』で読めば直ぐに分かる。

雫が言った内容は大体それで分かった。

だが…。

「雫」

「残念だけど凌駕、俺の場合これは独自の情報網から掴んだこと。

 有っただろ、読むだけじゃ分からない情報が」

視線をこちらに送ることなく淡々と音にする。

あぁ、やっぱりコイツは違う。

無表情のくせに、意外と雄弁だ。

本当に考えていることは悟らせないくせに、仕草や言動で語る。

そういう人間なのだ。

「ほら、当たってただろ。これは柊月に伝えるべきだろうな。

 俺は簡単に攻略できないって。伝言よろしく」

「お、お前は、どうして…!」

「あぁ、ひとつお土産でも持たせてやろうか。

 柊月の言う通り、俺は確かに『ミユ』の情報を持ってる。

 それが欲しいなら、他の人間使わないで自ら俺のところに来いよ」

堂々と言い放つ雫は男から見ても格好良かった。

一目散に逃げていった彼等を視界の端に収めながら、

巡は雫に近付き言った。

「うん、まぁ…柊月が俺を傷付けられると思えないし。

 あと…アイツも苦労してるのは知ってるから、ご褒美でもあげようかと」

「お前は先生か何かか」

「違うけどそういう目線で見てるのは否定しない」

柊月との関係性は知らないが、

問い詰める気にならないのは相手が雫だからか。

「詳しい話は後にして、まずは『柘榴』対策を考えようか」

雄大の提案に全員が頷き、幹部室に向かったのだった。

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