第66話

「雫は何でも出来るなって話だ」

凌駕がそう答えると、雫の眉がピクッと動いた。

「…そう。言う程何も出来ないと思うけど」

「え、例えば?」

「……巡みたいに、自分の武器を分かってて利用する事とか。

 凌駕みたいに真正面から人とぶつかる事とか、雄大みたいな協調性も」

次々と出される例に、俺以外のメンツの表情が止まる。

「…雫、一旦止まれ。こいつらが戸惑ってる」

「この程度で固まるか普通。比較対象があると分かりやすいと思った

 からこうやって説明したつもりだったんだけど」

雫は人の感情の機微を察するのも苦手らしい。

無表情のまま首を傾げている。

その動作も容姿端麗な雫がやると絵になってしょうがない。

「えっと…あ〜、だめだ雫それやめて」

「…は?」

「イケメンがそれやると心臓に悪い。

 頼むからこれで分かれよ、分かるだろ?」

凌駕の言葉に従い、雫の顔の角度は戻った。

「…ねぇ、雫。

 俺等は分かったんだけど、斎は?」

「俺の話は良い」

「そうとは行かないよ、斎。

 僕達は雫くんと仲良くなれたって自覚あるけど斎はまだでしょ?」

まさか話の矛先が俺に向かってくるとは思わず、俺は狼狽える。

「で?雫はなんかねぇの?」

「…なんか、か」

雄大の言葉に凌駕が乗る。

よく見ると雫も興味津々だ。

「…ない、な」

誰もが雫の言葉を待つ中彼はそう答えた。

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