第62話

「…あの、雫とどんな関係なんですか?」

「……雫は、俺の宝物」

「たからもの、?」

数歩先に進み、俺達から離れる。

「俺はあの時壊れた女の子が大切だった。何も出来なかった自分が

 悔しい。でも、今の俺では救えない。それは雫に対しても同じで、

 それを雫も分かってた。だから俺と雫はもう合うことはないと思う」

「そうなんですか…って、巡?スマホで何してんの?」

「…あ」

雄大の言葉を聞いて、振り返ると、巡のスマホは誰かに電話をしていた。

画面を見ると電話相手は雫で、

巡の様子を見る限り、思わず連絡してしまったのだろう。

『…巡?』

「え、あ…雫、だよね」

『自分で掛けて来といて聞く?』

雫は至っていつも通りの調子で巡と話している。

「ごめん、話聞いて気付いたら掛けてて…」

『良いよ、別に。巡ならそうするだろうって分かってた。

 だから気にするなよ。巡達は愛流から話聞いてるんだろ?』

不意に思い出された、千咲都 愛流の言葉。

あれは本当だったのだろうか。

ただの嘘や戯れであってほしいと思うのは、強欲だろうか。

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