第61話
まず大前提として話されたのは凌駕の家系の秘密について。
『読心術』という力について。
生まれつきにはその力を持たざる凌駕は両親から虐げられて育った。
それこそ『読心術』の力を持つ凌駕の兄は優遇されて育ったらしい。
「親父達は気付いてなかったが、俺は始めから凌駕が持つ力のことに
気付いてた。それが親父達に知られたらお前の人生に自由はなくなる」
「自由が?」
「そうだ。俺はお前の自由を奪う気は無かったからな。
岬家に送って正解だった。今は自由に生きてられてるんだろ?」
凌駕の兄の手のひらが凌駕の頭の上に乗った。
「は…」
「家の家系のトップに立ってる家がある。その家には跡取りの娘が居る。
『読心術』を後世に残すために能力の高い者同士を掛け合わせる。
そこ配合相手にお前を据えようと親父共が画策してるんだよ」
「は、」
凌駕が息を呑む。
「あの家に捕まったら終わりだ。逃げろ、お前の力は希少価値がある。
俺達の家系は特殊だ。お前はそんな家に染まるな、良いな?」
真剣な眼差しに戸惑いを浮かべるのは凌駕だけではなくて、俺達もだった。
「…何か、あんのか?」
「……俺は、ひとりの少女があの家に人生狂わされて壊れた様を
その場で見てた。もう二度と見たくない。だから、お前は自由に生きろ」
「…兄貴」
「俺はお前を親父達から逃がす。だからお前も逃げろ。
岬家がお前の居場所だって思っておけ」
その言葉は、弟を想う兄のそのものだった。
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