第60話
◇◆◇◆◇◆
「初めましてとでも言っておくべきか?俺は紅蓮という。
『紅蓮』とは呼ばないでくれ。それを呼んで良い相手は選んでる」
紅い瞳に漆黒の髪をした青年は、俺達を見つめていた。
「…アンタが、俺の兄貴か」
「お前が岬の家に送られたガキならそうだろうな」
飄々とした態度はどこか癪に障った。
それでも凌駕がどうしても会いたいと言っていた兄だから我慢できた。
「…それで?俺に何を聞く?
雫からは、話があるってことしか聞いてないんだが」
「…親のことを聞きに来たんだ。
俺が捨てられた理由と、連れ戻そうとした理由を知りたい」
凌駕は臆することなくそう問う。
それに対して凌駕の兄は薄ら笑いを浮かべ、
なぜだか馬鹿にしているように見えてしまい、苛ついた。
「あぁ…それね。それを話すにあたって知らなくて良いものもある。
お前は兎も角、他のお前の友達?が聞くべきなことじゃないと思うが…」
「話を遮る様で悪いですが、僕らは今更引き下がることはしません。
凌駕の友達で居たい。だから、知らないでいるのは嫌なんです」
雄大が俺の隣でそう宣言する。
凌駕が僅かに顔を赤くしているが、雄大は笑ってからかう。
「…俺も、凌駕なんて放置したら適当なところで野垂れ死にそうだし」
「誰が野垂れ死ぬか!!」
「時間が惜しいんで、話の続きしてもらってもいいですか?」
俺がそう締めくくると、凌駕の兄は笑った。
「何がおかしい?」
「いや・微笑ましいと思ってな。
お前がそういう奴等に囲まれているのが嬉しくてつい」
凌駕と同じく端麗な容姿をしている彼は、笑顔も魅力的だ。
「悪いな。じゃあ話そうか。俺がお前を岬家に送ったのか。
親父達が取り戻そうとしているのか。俺の知るすべてを話す」
紅い瞳は真剣な表情に強い印象を与えていた。
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