第50話

『柘榴』

綾瀬学院という高校の生徒会メンバーが幹部を務める不良グループ。

周辺の高校の生徒を基に作られた不良グループの中では派手な噂が多い。

『翡翠』と敵対してる訳ではないが、仲が良い訳でもない。

総じて会えば即喧嘩、という一触即発の関係を今まで築いている。

「どれだけ暴れ者が居るんだかね」

「一時期平和な時間が流れていた頃も居たらしいがな」

「確かその時のリーダーのお陰だったか?」

「そうそう。当時『柘榴』のリーダーは喧嘩を滅多にしなかった。

 『翡翠』はよく仕掛けてたらしいけど、全部完封しちゃってたって話」

当時といっても僕らが小学生だった頃のこと。

その時のリーダーは今は22歳くらいになっていることだろう。

「そのリーダーが卒業した以降からは結構荒んでたが…」

「最近回復してきたね。

 それも含めて今日『柘榴』の話をしたいんだけど――「うわっ雫さん!?」」

『?』

倉庫に到着した時、僕の声を掻き消すくらいの大声がした。


「…なんだコイツ」

「さぁ、殴り掛かられたから反撃したら伸びた」

声のした方に向かってみると、いたのは呼ばれていた雫くん。

彼の横には倒れている見知らぬ男とその頬を突く巡だった。

「全然起きない。

 雫があんな適当に連れてきてたから起きると思ったのに」

「適当って?」

「引き摺って来てたよ」

「丁重に運ぶ気は無かったのか雫」

「殴りかかってきた他人を丁重に扱う理由ある?」

「ねぇな」

「ないね」

「ああ、こんなにも簡単に納得しちゃうなんてなんか悔しい」

伸びている男はどうやら『柘榴』の人間らしい。

つまりは雫くんは襲われた訳だがいつもと変わらないのが彼だった。

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