第48話

◇◆◇◆◇◆


僕の母親は生まれつき身体が弱かった。

出産なんて、健康な人でも命懸けな行為、

どうしてしたんだと、今日も、母の墓石を目の前に思う。

「ねぇ、お母さん。僕ね、ずっと前に出来た弟を弟だと思えなくて」

――困ってるんだ、とは言葉に出来なかった。

「僕の弟はね、とってもいい子なんだ。

 なんだけど、きっと生まれる家を間違えたんだ」

巡はあの家に生まれなければ、幸せだったんじゃないかと。

あの家というか、あの義母の子供として生まれなければ、が正しいか。

巡の女嫌いは、全部あの女のせい。

それなのに、彼女はそれを知りもしないで、この世界でのうのうと生きてる。

腹が立つ、そう思うのと同時に。

僕如きがそんなこと思って良いのかという感情も湧く。

「僕は、兄として、弟を幸せに出来ないよ。

 ねぇ、お母さん。僕は、どうしたら良いと思う?」

誰にも聞かれたくない、僕の独白。

こうすると、いつも止まらなくなる。

止めてくれる存在が居なかったら。

「――10分経過、終わりだ雄大」

「斎、ありがと」

「別に今更感謝されることねぇ」

僕の気持ちを唯一知る彼は、いつもこうして傍に居てくれる。

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