第41話

「最後に須崎の」

「なに?」

「私は何の考えなしにレンの名を出したつもりはない。

 それを忘れないで欲しいの」

こちらに顔を向けないまま、彼は立ち止まる。

「…じゃあ、最後にこっちも言いたいこと言うよ」

「なんじゃ?」

「アンタに『須崎の』って言われる度に、思う」



「『俺がこの世に生まれなければ良かったのに』って――」



「伊舞希様」

「言うな、分かっておる。わざとじゃよ。

 それを否定できる様にとな。分かっておる筈じゃ、アレは頭は良いのじゃ」


◇◆◇◆◇◆


「愛流、帰るよ」

「伊舞希様とのお話はいかがでしたか?」

「いつも通りだよ、何処か鼻につく。

 あの人はそういう人だって、昔から知ってる」

帰ってきた雫に一番初めに気付いたのは赤毛だった。

扉が開く前から「雫様が帰ってきた」と呟いて、本当に扉が開いた。

「雫、ババァと知り合いだったのか」

「…まぁ、出会いは海外だったけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る