第38話

「それ、敵作る気がすると思うんだけど…」

「大丈夫だよ別に、雫様が良いって言うから」

どこまでも雫基準な男に、最早呆れてしまう。

「俺の中で雫様は至高なんだよねぇ。

 あの人に望まれるなら死んでもいいよ」

「うわ、怖くないそれ」

「まぁ、雫様はそんな事言わないけどな」

初めて見た時の印象は硬派で真面目な人間。

赤毛に関しては特に気にならなかった。

それほど清潔感に溢れていた。

「…そういや、ひとり足りないね?」

「凌駕のことか?」

「そ、岬 凌駕くん。

 本当はソイツが見たかったんだよね」

ギラッと瞳が光った気がした。

「凌駕がどうしたの?」

「俺の知り合いと似てるなって思ってたから。

 雫様も一応気にかけてる存在ならしいから気になるじゃん?」

何にも執着しない雫。

人と関わるのが嫌いな雫。

それが気にかけるとは、珍しい。

「…と言っても雫様の執着を手にできる人間はだたひとりと決まってる。

 それは誰よりも理解してるつもりだよ」

爽やかに笑う赤毛は、いっそ清々しかった。

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