第37話

雫が荷物を置いていった為、一応残っていようという話になった。

少し時間が経過した時、生徒会室の扉を叩く音がした。

「…誰だろう」

「どうぞ〜」

雄大が明るい声で入室を促す。

静かに扉を開けて入って来たのは数日前に見た赤毛の雫の使用人。

「どうも、雫様居ます?

 迎えに来たのですが、来ないので心配で」

「雫くんは今理事長いつにお呼ばれして向かってますよ〜」

「理事長?」

「俺の母親だ。呉城 伊舞希だ、覚えはないか?」

俺がババァの名を出すと、赤毛の男は少し考える様な仕草をした。

「……あぁ、伊舞希様か。

 それは雫様も無碍に出来ないね」

「…アンタこないだ見たけど、雫の使用人で合ってんの?」

「自己紹介が遅れましたね。

 俺は千咲都 愛流。雫の使用人兼お目付け役を務めています」

爽やかで見た目も悪くない。

が、雫の傍に立つと少し霞んでしまいそうだ。

「僕的には、敬語じゃなくて良いんだけど斎と巡も良い?」

『別に』

俺達がそう返すと千咲都 愛流は少し笑う。

「それはこちらとしても助かる。

 なんせ俺ホントは雫様以外に敬語使いたくないし…」

あぁ、コイツ本性はこういう奴だったのか。

俺が溜め息を吐くと意味深に彼は笑った。

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