第35話

「1位おめでとうございます斎さん、雫さん!」

「あぁ」

「ん」

雫は丸まったお題を手渡して即離れようとする。

「雫、お題の内容教えろ」

「勝手に見れば?」

彼は既に興味がない様だ。

もう足の向かう先は生徒会室で、グラウンドの方に背を向けている。

「雫、もう戻るのか?」

「勝敗とか興味ないし」

「…あとで行く」

「ん」

雫の姿が見えなくなった後に、俺はお題を見せてもらった。

そのくしゃくしゃになった白い紙に書かれている文字は――。


『好きな色を持ってる人 例:髪色など。

 (なかったら思いついた色でも可!!)』



そこで思い出した雫の言葉。

『…いいか、別にコレで』

「…適当に選んだ色か」

思わずそう口にして、何を悔しがっているんだ、と思った。


◇◆◇◆◇◆


「…コレでいい、なんて思わず出るもんだな」

綺麗な、黒髪。

アイツと似た、染めてない綺麗な黒。

「…思えば、好きではなかったな。きっと煩わしかっただけだ。

 ただ、あの頃の自分が、どうしても欲しかった色ってだけだよな」

ハッと零れた自嘲気味な笑いは、誰にも届かない。

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