第33話

「…愛流」

「はい?」

「愛流まで、俺に失わせないでくれ」

「心得ていますよ、俺はあなたの使用人ですから」

「分かってるなら、良い」


◇◆◇◆◇◆


体育祭当日

「高校にもこんなカスみたいな競技あると思わなかった」

「カス言うな、生徒会役員が」

雫は午後の競技が始まって開口一番、そう愚痴った。

今のところ各学年3クラスある訳でA、B、Cクラスごとで勝利を争う。

基本的な短距離走から始まった体育祭。

俺達生徒会のメンバーは特に競技に得意苦手が一切なく、

クラスメイトが勝手に決めた競技に参加していた。

午前と午後でひとつずつ参加することになっていて、

巡と凌駕は100M走、雄大はハンドボール投げ。

俺は走り幅跳び、雫は走り高跳びだった。

そして午後になった訳だが、午後には目玉の競技がある。


借り物競争だ。


人から物を借りてゴールまで走るその競技。

人と関わることが苦手な雫にとっては苦行だろう。

「取り敢えず後でクラスの奴は絞める」

「わ〜、物騒だねぇ。落ち着きなよ、雫くん」

「まぁ、参加はしないと行けないんだから頑張ってきなよ雫」

巡と雄大は既に午後の競技も終了しているため、気が楽な様だ。

「ほら、行くぞ雫。俺も参加するから観念しろ」

「それが一番嫌なんだけど…?」

嫌そうには見えない無表情を見せながら、

凌駕に首根っこ捕まえられて雫は連れられていく。

「頑張れよ、優勝すれば焼き肉食えるぞ」

「それに魅力感じる程大食いじゃない」

俺が思わずふは、と笑うとそのせいか首に回る凌駕の手が捻られた。

「い"った!」

「首絞まるんだよ、殺す気かお前」

凌駕に愚痴をこぼしながらも、一応ちゃんと参加してくれるらしい。

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