第32話
「…あ、雫だ」
生徒会室の窓から外を見ていた巡が呟く。
「誰だろう、アレ」
「あ?」
裏門の方にある大きな黒塗りの車。
ウチのババァも使っている車であり見覚えがある。
それに向かうのは勿論雫で、その隣にいるのは赤髪の男。
見た目からして俺達より僅かに年上だ。
流れる様に雫は自分の持っていた鞄をその男に投げ捨てる。
それを簡単に受け取った男は何か反応する事もなく車のドアを開ける。
「家の使用人、とかかな」
ここに居るメンツ全員がそういうやつがつく様な家の生まれの為、
特に驚くことはない。
そもそもこの霜楓学園は、そういうお坊ちゃん、お嬢ちゃんが多い学校だ。
「それにしては赤髪って凄くない?」
「確かにね。でも、主人がアレだし気にしてないんじゃない?」
ホワイトベージュの髪色の主人からすれば、赤髪も変わらないのだろうか。
全員でジッと見つめていると、車に乗ろうとした雫が振り返る。
こちらを向いて半眼になっている。
その後車に乗り込んだと同時にスマホに連絡がいる。
『人見てる暇あるなら仕事しろ』
それを見て思わず笑ってしまった俺達だった。
◇◆◇◆◇◆
「何か面白いことでもありました?」
「…なんで?」
俺の質問に対して、少々遅れて反応した彼。
珍しく、何かを考えていた様だ。
「なんだか、楽しそうだったので」
「それって嫌味?」
鏡越しに美しいホワイトベージュの瞳と目が合う。
「いいえ、ただの願望です」
「……皮肉じゃん、それ。
愛流はそんなこと気にしなくて良いんだよ」
「えぇ、貴方の使用人としては気にしません。
けどただの千咲都 愛流としてなら気にして構わないんでしょう?」
「…勝手にしなよ」
知ってる、絶対そう言うって。
あなたは自分じゃない誰かの事をとても大切に想えるくせに、
自分はどうでもいいと言う人だって。
だから俺達が大切にしたって、構わないんだと。
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