第30話

「関係ないって、お前…」

「別にこの世であいつらだけが複雑な関係である訳でもない。

 俺は何に対しても対等に扱ってるだけ」

与えられたパソコンを器用に扱いながら、淡々と述べる雫。

それはまるで、用意されたセリフの様だった。

「まぁ、俺達とお前は違うのかもな。

 昔から関係があった訳じゃないからな」

「……幼馴染とかだったの?」

「あぁ、俺達はみんな幼馴染だ。

 始めの頃は、雄大と巡は兄弟なんかじゃなかった」

「ふぅん」

会話をしつつも変わらないタイピング速度。

普段からしている奴しか出来ない様な速度だった。

「雫には居なかったのか?幼馴染」

「それ必要な質問?」

1ヶ月前に同じ言葉を言われた筈だと記憶が呼び起こされる。

なら俺も、同じ言葉を返そう

「これからお前を知っていくには、必要だと思った」

「あ、覚えてたんだ」

「そんなに記憶力は悪くない」

「そ。――居たよ、親が選んだ相手だけど確かに居た」


『親が選んだ相手』

自分で選べなかったのか。

そういう家系だったのかも知れない。

「雫、お前は「勘違いだけはしないで」」

俺が言いたいことが分かっていた様に声を重ねた雫。

相変わらず無表情のままだ。

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