第29話

◇◆◇◆◇◆


雫が霜楓学園に来て、一ヶ月が過ぎようとしていた。

もうすぐ始まるのは体育祭。

当然生徒会は学校行事の運営を任されている。

「と、いう訳で仕事がわんさか出てきたんだが――」

「凌駕と巡はどこ行ったんだろうね?」

「呼び出せば?」

今生徒会室に居るのは俺と雄大と雫のみ。

恐らく凌駕と巡は業務が嫌で逃げ出した。

「呼び出しに応じてくれないから困ってんだよねぇ、それが」

雄大が首を傾げると雫はスマホを出した。

電話の相手は凌駕らしい。

「凌駕、今すぐ戻って来い。契約切るぞ」

『…今行く』

「ん。――はい、あとは巡だけだ」

10秒にも満たない簡単な会話。

それでも、一気に彼らの親密度が上がったのが分かる。

「いつの間に凌駕のこと名前で呼んでたの、雫くん。

 俺も名前で呼ばれたい〜」

「下らないこと言ってる暇あるなら巡連れて来い。

 腐っても兄なら弟のしつけくらいしておきな」

雫の言葉に、雄大は僅かに動きを止めた。

「…は〜い、じゃあ探してくるから先に始めててよ」

雄大が部屋を出て、俺と雫だけになった生徒会室。

「…お前、容赦ないな」

「あいつらの関係性がどんなに歪んでようが、俺には関係ない」

先程の雫の言葉は雄大にとっては酷なものだった。

巡と雄大は義理の兄弟であり、兄弟としての関係は良いとは言えない。

それを知っている俺達は、今までそういう言葉を避けてきたのだ。

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