第27話

スマホを取り出して、ある人物に通話を繋げる。

『はい、雫様』

「アイツのスケジュール教えてくれる?直近で空いてる日が知りたい。

 それが分かったらアイツに絶対に空けとけって言っといて」

『須崎様の、ですか?』

「だからそうだって言ってるじゃん」

『……雫様、会われるのですか?それは――』

「会えないのに誰が会うか、馬鹿。俺じゃなくて会うのはアイツの弟。

 俺が自らアイツに会うわけ無いだろ。分かってんだろ、愛流(める)」

『…畏まりました、可能な限り早くご用意致します』

「頼んだ、じゃあ切るよ」

相手の返事を待たず通話を切る。

「……これも、岬 凌駕の大切なもの?」


◇◆◇◆◇◆


ツーツー、と切られた通話画面を見て溜め息を吐く。

「相変わらず自分勝手なんですから…。

 まぁ、わざとだって知ってますよ。俺も本当の雫様が優しいこと」

でも珍しい、と考え直す。

俺は高校生の時に、初めて雫様と出会った。

父に連れて行かれたある大きな日本家屋の最奥の部屋。

当時13歳の子供に与えるような部屋ではなかった。

そんな部屋に、その子供は頬杖をついて俺を待っていた。

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