第26話

「―――それでも知りたい」

「……ふぅん、じゃあ良いよ」

「良いって何が、」

「俺が探ってやるって言ってんの。

 俺は一族の中でも上の家に居るから、やりたいこと出来るからな」

机に座っていた雫はカタリと音を立てて床に降りる。

「ただし、この件は他の誰にも言うな。岬家の人間はまだしも、

 生徒会の奴等には一切言うな。巻き込むことになる」

「分かった…」

「じゃ、契約完了。なるだけ早く情報を集める。

 もし出来たら、お前と兄貴を会わせてあげるから」

振り返ってそう宣言した雫は、やはり俺の瞳をじっと見つめていた。


◇◆◇◆◇◆


よく似ていた――自分が知るあの紅い瞳と。

「知りたい、か……」

知って何になるのだろうか。

知ったところで、どうすることも出来ないというのに。

「意味のないことをする人間は好きじゃない」

そう口にしてから首を傾げる。

なぜ、わざわざ口にしたのだろうか。

不思議には思ったが、特に気にする様なことでもないからすぐに忘れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る