第20話

――2時間後


「お、起きたか」

「ん、おはよ」

眠る前とそれ程変わらない様相で戻ってきた雫に俺は笑い掛ける。

「2時間で疲れ取れたか?」

「まぁ、疲れ取るっていうよりか挨拶して回る時の体力温存だから」

「成程な」

先程より顔色が良さそうで安心していると、雫は周囲を見渡す。

「…で、俺が移動するより来てもらった方がまだ良いと思うんだけど

 これはどうするのが正解かな?」

「…確かにそうだな。雫と話したい奴らはこっちに来い」

予想以上に人数が来て、雫にはキツイんじゃないかとそっちを見たが、

彼はそんな素振りを一切見せずに対応していたのに少し驚いた。

喧嘩が強く、容姿端麗な雫はすぐにアイツらと打ち解けていた。

「……予定があるから、今日のところはこれくらいでいい?」

暫く経ってから、雫はそう零した。

「あぁ、分かった。今後は来たい時に来れば良いな。

 生徒会室にも副会長の部屋はあるからそっちも好きに使え」

「ん、分かった。じゃ、また明日」

雫が『翡翠』の倉庫をあとにしようとしたその時、

彼のカバンから大きな着信音が鳴る。

雫は数秒黙るとカバンに手を入れてスマホを取り出した。

「一体何の用?手短にして」

その一言から相手の返答を聞いた雫は無表情だが機嫌が悪そうに通話を切る。

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