第19話

「取り敢えず休ませて。

 少し休んだら出てくからさ」

「分かった、また後で」

姿を消した彼らを見て、俺は真っ直ぐベッドに倒れ込んだ。

「あ〜キツ…頭割れそう」

黒で染まった視界。ふと親しみのある匂いがした。

彼らの話じゃこの部屋は暫く放置されていた筈なのに、強く残っている。

「……恭のにおいがする」

それは、恭がここで多くの時間を過ごした証だ。

「恭には、居場所があったんだ」

その居場所を捨てたのもまた事実。

「恭にとって、あそこはそんなに大切なもの?

 俺にはよく分かんないなぁ…。まぁ、俺にはもうそれすら無いんだけど」

もう考えるのは疲れた。

寝てしまおう。


◇◆◇◆◇◆


「斎さん、雫さんは――」

「アイツあんま人多いトコ好きじゃないから一旦部屋に下がった」

「そうですか、挨拶しようと思ったんですけど…」

「気にすんな、後で来るつってたからよ」

メンバーの一人にそう返すと、周りも納得した様に笑う。

そんな彼らの様子を見て、やはりそうかと理解する。

雫は相手に後遺症が残らない様に力を調節していたらしい。

あれはどう考えても武術の心得がある人間の動きだった。

素人同士の喧嘩で腕を上げた俺では勝てないかも知れない。

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