第16話

どうでもいいけど、今は一旦休みたい。

不特定多数の男と殴り合った。

その事実は俺にとって精神的苦痛として身体にダメージが残る。

「…ねぇ、雫が辛そう。自己紹介とかするんだろうけど

 少し時間置いてあげない?」

巡がそう提案した。

「あ〜…確かにね」

「良いんじゃねぇの、その方が楽だろ」

「…必要なら、時間を設けよう」

肯定的な言葉が並び、俺は拍子抜けした。

だが…。


「…いいよ、別に。人の多いところじゃ結局休まらない。

 このまま続けて、悪いけど速攻で帰らせてもらう方が楽だ」

俺はそう否定して他の連中の方に視線を向けた。

そちらは羨望の意を持った眼差しで俺を見つめていて、居心地が悪い。

「…つまり、ひとりで居られる空間があれば良いって話だな」

「…あるわけ?」

「あぁ、ここは霜楓の生徒のもうひとつの居場所だ。

 誰の願いも叶えられる様に設計されている」

呉城斎の言葉に、俺は僅かに驚く。

流石呉城伊舞希…そういう点は抜かり無いのか。

霜楓は呉城伊舞希が創った比較的新しい私立高校だ。

今年で確か25年目かそれくらいだった気がする。

モットーは楽な青春を送らせること、とかなんとか言っていた気がする。

「…じゃあ、少し借りようかな」

「こっちだよ、雫。個室は2階にある。

 案内するからついてきて」

巡に手を引かれ、俺は倉庫の2階に上がった。

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