第8話

北校舎は、この広い私立校の中でも人が寄り付かない場所だ。

生徒会室があることもそれを助長しているが、一番の理由はある迷信だ。


――北校舎のある教室には、喧嘩をしても校則に引っかからない場所があると。


馬鹿げているが、北校舎が静かになるのは俺としても助かる。

知らなかったか、須崎はその領域に足を踏み入れたのだ。


あのホワイトベージュの色は目立つ。

すぐに見つかるだろう。

「なぁ、須崎ってあれ染めてんのか?」

「…さぁ?染めるのは校則で禁止されてないし

 かといってあんなに綺麗に染まるものでも無いと思うよ」

なにより髪色と同じ目の色は、アレが地の色だと言っている様だ。

「アレが地毛なら、ハーフとかなのかな」

「それっぽくないけどね、見た目とか」

「――あ、居た」

巡の視線の先には、先程見たホワイトベージュと、もう一つの色があった。



「ねぇ、須崎くんってさ遊び人?」

「…さぁ、どう見える?」

「う〜ん、紳士なふりしてる人に見えるかなぁ」

「酷いこと言うね、泣くよ俺」

「嘘だぁ」

須崎と、俺のクラスの男遊びの荒い女が居た。

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