第5話
「伊舞希様、宜しかったのですか」
「何の話だ?」
斎が生まれた頃から己に仕える柳という男にそう返す。
「斎様が前へ進むために背中を押した事は何一つ間違っていません。
ですが、その右腕として須崎様を据えるのは些か問題があるかと…」
「そうかもしれんな。だが私はそこまで馬鹿ではないのだよ。
何故私が須崎のをこの学園に迎え入れたと思う、柳」
「と、言いますと?」
「あの生徒会の連中には秘密が多い。が須崎のを前にして隠し切れる訳がない。
彼らの秘密は暴かれ、昇華される。その次は須崎のだ」
生徒会役員という名の檻から、いつか必ず解き放ってやらねばならん。
それが簡単ではないことなど、疾うの昔の知っている。
「須崎の名を冠してこの学園に来たとなれば、アイツの覚悟は相当のものだ。
それを解き放つのは、我が愚息と愉快な仲間たちで事足りる」
久しぶりに見た、あのホワイトベージュの髪と瞳。
それを隠さぬというのは、あの子の矜持というやつなのだろうか。
実に美しいあの色。
だが、昔に比べれば光を失い随分と濁って見えた。
もう、あの可愛らしい笑みを見ることは叶わないのだろうか。
私はあの笑顔が一等好ましいと常日頃から思うておったというのに。
もしかすれば、あの子の記憶にはもう私など存在していないのやも知れない。
「斎様方が敵うのでしょうか」
「今は無理でもいずれ必ずそこまでに叩き上げるのだ。
奴らに須崎のを任せたのもそのためだ」
「愚息なりに、精々足掻くと良い。
あの天使はちょいと手強いのだからな」
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