初登校!保健室で良いですか?
「お兄ちゃん!早くしないと本当に遅刻しちゃうよ!私もう行くからね!」
ドアの向こうからひーちゃんのそんな声が聞こえてくる。
今の時間は7:30。
「なぁ、そう言えば俺転生したばっかで自分の学校の場所知らないんだが。」
「そう言うと思って、はい!この扉の向こうに今日から通う学校があります!」
何処から大きな扉を取り出すリオ。
やっぱりコイツ水死体みたいな名前の青狸なのでは……。
「とにかく早く支度して学校に行きましょ。
私はやる事があるのでこれで失礼しますね!」
「あ、おい!」
返事を待たずにさっさと消えやがった。
そもそも制服なんてどこに……。
「まぁ、普通にクローゼットの中か……。」
まさかこの年になってまた制服を着る事になるなんてな。
クローゼットから取り出した制服は、俺が実際に通っていた高校の物とは違う物だった。
「本当に俺、高校生になったんだな。」
制服に袖を通して改めて実感する。
「あんたまだ出てなかったの。
日奈美、もう行ったわよ?朝ごはんは?」
と、そこで母さんが部屋のドアから顔を出す。
「あぁ、食べていくよ。」
母さんが作ったフレンチトーストを食べ、歯磨きを済ませてからリオが出したドアを潜る。
「驚いた……。」
本当に目の前に着いた。
ちなみに急に現れたドアから出て来た俺は、当然ながら注目を集めていた。
「え、今の何……?」
「どこでも️〇ア……?」
「私……寝ぼけてるのかな……?」
どうしようwもう帰りたいw
と、そこで思い至ったのがこれ。
「よし、保健室に行くか。
うん、そうしよう。
だってそもそも俺自分のクラス分からないし。」
「いや、どうしてそうなるんですか!?
普通に周りの人に聞けば良いじゃないですか!?」
「あぁ、なんだお前も……ってえ……?」
俺の隣に並んだリオは制服姿だった。
「なんだよ、お前も実はここの生徒だったり?」
「違いますよ。
あなたを陰ながらサポートするために潜入したんです。
こう言うのは形から入る物ですからね。
どうですか?似合ってますか?」
その場でくるりと一回転するリオ。
「はいはいクラスで17番目くらいに可愛いよ。」
「褒め方が微妙!?てかもはや褒めてるのかすら分からない順位だ!!」
「何を言う、一番はひーちゃんに決まってるだろう。」
「このシスコン……。」
マジトーンやめてくださいw
「まぁ?私も天使なのでそれなりに年は重ねてますけど?
でもこの着こなしっぷりと私の大人っぽさや淑女としての風格を持ってすれば誰が見ても女子高生でしょ!」
無い胸を張りながらそんな事を言うリオ。
「女子高生ってか小中が……「何か言いました!?」」
ひーん……。
「大体周りの人に自分がどこのクラスかなんて聞いたら不審がられるに決まってるだろ。
だからこんな時は保健室って訳だ。
どうだ、筋が通ってるだろ?」
「何処をどう筋が通ってるのかは知りませんけど……。
単に授業サボりたいだけじゃないですか……?」
「そ、ソンナコトナイヨ……?」
「うわぁ……棒読みだー。」
と、言う訳で。
校舎に入って一階の分かりやすい位置にあった保健室に足を運ぶ。
ちなみに職員室は素通りである。
「職員室に行けば普通に担任も居たのでは……?」
「ははは。」
「笑って誤魔化した!?」
保健室のドアを軽くノックする。
「はぁい。」
「……ん?」
返ってきた返事は随分と聞き覚えのあるものだった。
「あらぁ!悠さんではないですかぁ。
どうされたんですかぁ?」
「おま……いや!貴方様は!」
「いや、どう言う反応ですか……?
知り合いなんですか……?」
リオに呆れられてしまったが、そんな事今はどうでも良い。
まさか彼女までこの世界に居たなんて。
「千鶴さん、おはようございます!今日もご馳走様です!」
「対面してすぐのセリフがご馳走様!?」
「何を言う、それ以外に無いだろ?」
「いやいや……。」
「あらあらぁ。
お元気そうなのに保健室に来たんですか?」
「はい、あなたに会いに来ました!
いや、俺は実はこの場所に最初から運命的な物を感じとっていたんだよ。」
「サボろうとしてた癖に……。「うぇっほん!」」
全く失礼な奴め。
「それより彼女の事をそろそろ私にも教えてくださいよ。」
「あぁ、そうだったな。
彼女は
俺が居た世界の️Uthtuber《ユーズチューバー》で、ニックネームはSTERA。
ちなみに俺の最推しだ。」
Uthtuberと言うのは俺が元いた世界で流行っていた、アバターを使って行う音声配信アプリである。
「はぁ……。」
全く、自分から聞いといて、これですよ。
とは言え彼女の魅力はもっと伝えておくべきだろう。
年は俺の一つ上、清楚系と言う言葉は彼女の為にあると言わざるを得ない茶髪のロングストレートヘア にそれを更に際立たせる整った顔立ち。
そして何よりも俺が魅力として認識しているのはその可愛らしかったりたまに色っぽかったりもする声である。
最初に彼女を知ったのは音声配信の場だ。
その美声に癒されたり、歌声を聞き惚れたりしてる内にすっかり虜になってしまったと言う訳である。
「まさかこんな形で会えるなんて!!」
「毎日でも会えますよぉ?」
「そうだけどそうじゃない!」
彼女とはまだ人気になる前からの付き合いだっただけあり、それなりに仲は良かったと思う。
でも実際彼女は遠く離れた県外に住んでたし、 会うことはないのだろうと思ってた。
「もう死んでも良いや……。 」
「それ絶対保健室で言う言葉じゃないですからね!? 」
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