第6話 それからの
彩は、暗くなった部屋で目を覚ました。
武人が帰ってから、そのまま寝てしまっていた。
「本当に都合がいいことばっかり言って、もう訳わかんない」瞼の奥が熱くなっていた。
リリンンリンリン
「もしもし」
「彩さん?あれから、ずっと通じなかったから‥‥」
(翔太かあ)
「いそ がしくて」
「なんだか元気がないみたいだけど」
「疲れて寝てしまって、今起きたのよ」
「あ、ごめん。明日掛けなおそうか?」
「べ、別にいいわよ。うっう、うう」嫌だ、なんで涙が‥‥
「あ やさん、泣いているの? 何か、あった?」
「なんでもない‥」自分を繕う余裕がなく、スマホを握りしめながら涙が止まらなかった。
翔太は、ずっとその間も見守ってくれていた。
「大丈夫。今は一人じゃないから。抱きしめられなくて残念だけど‥‥」
時おり、一言二言勇気づけてくれていた。
涙を拭くテッシュの音や、鼻を噛む音もすべてを包みこんでくれていた。
「ありがとう」泣くだけ泣いたら、素直に口から言葉が漏れている。
「よかったら明日、会わないか?今日泣いた理由も聞かせてくれない?」
「‥‥じゃあ、明日仕事終わりに電話するわ」
「えっ、ほ、本当に、会ってくれるの?でも、こんな状態で会社に行ける?」
「もう残り少ない出勤になるし、それにあなたのおかげで少し心が軽くなったみたいだから大丈夫」
「こ これからも、どんなことでも僕を頼ってください。ものすごく、今日は幸せな気分なのでおやすみなさい」そう言って、切れてしまった。
私もその言葉を聞いて嬉しかった。
(でも、突然に電話切る?ふふふ)
翔太の顔は、もうあまり覚えてなかったのに‥。
「おやすみなさい」もう、切れている画面に向かって呟いていた。
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