第44話
いちいち癇に障る言葉を漏らし続けながらも、甘い香りを纏わせ、まるで誘っているかのようにべったりと密着してくる女を無視して20分ほど経過した。
「龍ーー」
「ああ。悪いが少し待機してろ」
「……了解」
本家とは真逆に場所に位置するマンションへと辿り着くと、気疲れしたようにため息を吐きながらドアを開けた。
不本意ながらも、百合を飼うと決めのは自分だ。
今更な事は言えない。と思ったのだが。
「龍ちゃん、眠い……抱っこ……」
座ったまま降りる様子のない百合は、腕を広げてどこぞの女王の様な稚拙な振るまいを仕掛けてきた。
ーーダメだ。苛々する。
「足あんだろ」
「眠くて、よろけちゃうの……。龍ちゃんが温かいから……」
子供か、と今すぐ罵倒してしまいたいが夜分に声を荒げるのは怪しまれてしまう為、でかかった言葉を龍之介はグッと堪えた。心の内で葛藤している間にもバカ女は再び眠りに入ろうとしている。
「クソが……」
水瀬の不機嫌な気配を感じつつ百合を横に抱えた龍之介はそそくさとマンション内へと足を運んだ。
「おい、脱力すんなッ!首に腕回せよ!」
「龍ちゃん、良い匂い~……」
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