第43話
——2、30秒が頃合いだろうか。
龍之介の胸元をギュッと握りしめながら、苦痛を訴える百合はそろそろ限界を迎えていた。
その瞬間を見計らい、龍之介は百合を解放する。
「……ッ、はぁ……はぁ、龍ちゃ、」
「思い知ったか。アホが」
酸素を求めて、肩で大きく息をする百合の姿は滑稽だった。余裕のない表情に、いい気味だと龍之介は満足気に笑う。
「笑ってんじゃねえよ!デブ!」
「……」
「ハゲ!」
「俺は太ってねえし、ハゲてもない」
この女ッ!
赤の他人にここまで露骨に侮辱される体験はほぼ無いに等しかった為、正直困惑していた。精神的に参ってしまうこの女との会話は、車窓へ視線を移し強制的に終了させた。
構う自分も悪い。
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