第34話
苛々したように貧乏揺すりをする龍之介を隠れて睨んでいた百合の耳に、今に至るまで全く声を発さなかった水瀬の落ち着いた声が届いた。そして突然の急停車に百合は不思議な面持ちで首をかしげる。
来客とは一体誰の事だろうか、と百合が思った矢先の事だった。3人の行く手を塞ぐようにして停車していた前方車両が、突如ヘッドライトをハイビームに切り替えると猛スピードで迫ってきていた。
「え?なぁに?眩しい〜」
「俺とカーチェイスってか」
途端に目に色を変えた水瀬は、即座にバックミラーで背後を確認するや否や豪快にアクセルを踏み込み車を後退させた。
急発進により、車内が大きく揺れる。
眩しさから視界を閉ざし、状況を飲み込めずにいた百合を龍之介は咄嗟に引き寄せ、強く抱き締めながら自分の胸に顔を固定させた。
「龍ちゃん、苦しい〜。離してよ〜」
「喋んな、舌噛むぞ」
「ねえ、どうしたの?何かスピード早くない?」
「いいから喋んな」
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