第35話
真っ直ぐ後退し、大通りへ出るつもりだった水瀬だが、またもや行く手を遮るように後続車が現れた事により、「チッ」と大きく舌を鳴らすと、急ブレーキを掛けて素早く右折し、再び時速を上げた。
歓楽街を抜けた裏通りである、暗く狭い道をハイスピードで走行している水瀬の運転技術は相当なものである。
車の揺れに酔いそうになりながらも、百合は龍之介の胸の暖かさに眠気を催していた。コートで隠れているが、ほんのりカクテルの匂いも感じる。極め付けに、色気のある低音ボイスが耳に伝わると、百合は静かに眠りに落ちた。
「撒けたか?」
広い表通りに出ると、追っては逆方向に踵を返していた。龍之介の問いかけに水瀬は眉を顰め答える。
「撒いた、と言いたいところだが違うな。恐らく、冷やかし。本気でやり合う気は無かったようだ」
水瀬が右にハンドルを切ったタイミングで助手席に座る男、小野田も口を開いた。
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