第22話

紫藤の頭を自分の胸でギュッと抱きしめた百合は、愛おしそうな声をあげた。





「とっても可愛い〜!!」


「なッ、てめえ、離せッ!ぶっ殺すぞ」


「よしよ〜し。可愛いね〜」





正直、手を挙げられる覚悟をしていたつもりだった。しかし、予想に反して壊れ物のように触れてきたり、私の身を案じてご丁寧にヤクザの恐ろしさまで教えてくれる彼の性質が途轍もなく可愛く思えて仕方がなかった。


単純に彼を気に入ってしまったのだ。紳悟ちゃんが嫉妬しちゃうかもしれない。




あれこれと頭の片隅で考えながら、百合はもう一度愛嬌を添えて口を開いた。





「ねえ、お願い。私のこと飼って?」


「誰が飼うか。いらねえよ」


「私の体好きにしていいから。相性抜群だったし。ね?」


「ね?じゃねえよ。バカか?そういう問題じゃねえだろうが」





このままでは埒があかないと判断した百合は、奥の手を使うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る