第13話
見せつけるように空っぽのグラスを舌でねっとりと扇情的に舐めあげると、紫藤は何か物言いたげな顔をしたかと思えば、突然、百合の手首を引きながら脇見せずに階段へと続く道を歩き出した。
「大原、話は後だ。上借りんぞ。お前らは、ここに居ろ」
二階はvip席だ。
ひとまず第一関門は突破したため、その快感から頬が緩む。しかし、このまま好転し続けて鴨にさえなってくれたら良いのだが、この男は侮れない。
「美夜ちゃん……」
事の成り行きを顔面蒼白で見守っていた紳悟は、百合の名をか細い声で呟いた。こちらに振り向いて茶目っ気たっぷりに舌を出す百合と視線が合い、その大胆不敵な一連の行動に紳悟は唖然とせざるを得なかった。
階段を上りながら紳悟の泣きそうな表情を思い出して、つい吹き出してしまいそうになるのを百合は必死に堪える。
そんなに心配なら間に入って来ればいいものを、それを実行しない……いや、できないと言った方が正しいのかもしれない。それ程、危険な組織なのだろうと解釈した。
好きな女を守りたいのに、守れない子犬な紳悟はやっぱり可愛い。
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