第12話

「……は?」





思わず間抜けな声が漏れた。





「失せろ」





女に事欠かない男であるのは見た目だけみても頷けるが、思ったより手強い。





ーー嗚呼、やっぱりこの男は可愛くない。




だが、こんな扱いを受けて易々と身を引くほど自尊心が低いわけでもない。百合は、紫藤にそっと耳打ちをした。





「もしかして、貴方インポ?使い物にならないの?」


「……」


「だったら、悪いことしちゃったかしら?ごめんなさいね?」





百合は明らかな挑発行為に出た。


その瞬間、無表情に見据えていた紫藤も百合の軽口が癇に障ったらしく、その瞳が本職を物語るように殺気立った。


普通ならば心理的圧迫感に襲われてしまうのだろうが、客観的に見れば大したことはない。だから睨み殺すような紫藤の視線は他人事のように受け入れた。

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