第11話
「ごめんなさいね。弁償しますから」
「必要ない」
抑揚のない声色にも怯まず、百合は胸元にさり気なく寄りかかりながら上目遣いで紫藤を見上げた。無反応に近い紫藤に若干イラつきながらも、狙った獲物は逃がさないのが百合であった。
「とても高価なスーツなのに、そんな!……あの、私お金はあまり持っていなくて。だから、その……」
発情したように見せかけて、出し惜しみせず色気を振りまいた。セックス手前の甘い声で誘惑を開始する。
「——今夜、空いてますか?」
お馴染みの常套句を口にして、ピクリと反応した眉に、あと一押しだと思ったところで紫藤が口を開いた。
「ベタベタ触るんじゃねえ。不快だ」
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