第10話

取り乱したように百合の名前を呼ぶ紳悟の声は無視をする。





「ふふっ。なんだか私酔っちゃった〜」





ネイビー色に彩られた仄暗い店内、静かに鼻を掠めるカクテルの香りは人々を何割り増しにも魅力的に映す。


さて、貴方には私がどう映る?





「お兄さん達、こんばんわ……って、きゃあッ!ご、ごめんなさい私ったら」





意図的に躓き、カクテルを紫藤の胸元にぶち撒けた。





「おい、お前——」





取り巻きの男達が百合に近づいた瞬間、紫藤は男達の動きを無言のまま右手で制した。そのタイミングを見計らった百合は、紫藤の胸元にハンカチを押し当てる。


166センチの百合はヒールを履いてるため今は170センチ程はある。それでも見上げてしまうのだから紫藤は恐らく180センチ以上はあるはずだ。


この距離を活かして、更に吐息が掛かる位置まで距離を縮める。

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