第7話
少し離れた位置から通話を始めた紳悟は普段より丁寧な言葉遣いで緊張している様子だったため、目上の人間だということは理解できた。一瞬悪戯心が芽生えたが、流石に仕事関連の話では邪魔するわけにもいかないと思い、百合は暇を持て余したように店内を見回した。今夜は自分しか客がいないようだ。他のバーテンダーも見当たらない。
「え?!今からですか?!」
「ん?どうしたの?紳悟ちゃん」
「あ〜、いや……店には居ますけど。はい……はい、分かりました。はい、失礼します」
突如、表情に焦りを滲ませた紳悟に首を傾げる百合。通話を終えたらしい紳悟にもう一度、にこやかに微笑みながら声をかけようと口を開きかけたところで紳悟は小走りで定位置へと戻ってきた。
「美夜ちゃん、今日はもう帰って!大事なお客さんが来るから!」
「え〜、嫌よ。寂しい〜」
「我が儘言わないで。ね?」
「ねえ。大事なお客って誰?」
「いや、だから……その……」
変に口ごもる紳悟に百合は口元に笑みを浮かべる。
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