第6話

妖艶に微笑む百合に、紳悟はまたしても投げやりに口を開く。





「その気なんてないくせに〜!どうせ俺は金持ちじゃありませんよーだ!」


「そうね。あと、私のこと好きすぎ。結婚してなんて言わなかったら、もう少し長く同棲できたのにね」


「好きとは言わなかったのに……」


「ふふっ。でも束縛とかNGだから」





何か言いたげな紳悟に構いもせず、百合は話を展開させる。





「ねえ。誰かいい人紹介してよ〜」


「だから、俺に言わないでってば!そもそも美夜ちゃんの方が顔広いんじゃないの?金持ちとは特に」


「店の客は、後々面倒だから除外。客に頼んで紹介してもらうのもいいけど、ご機嫌取りも大変なのよね 〜。だから紳悟ちゃんに口利きしてもらいたかったんだけど……残念」


「力になれなくてごめんなさいね〜!」


「何よ、まだ拗ねてるの?」


「うるさい!」


「ふふっ。相変わらず可愛いんだから〜。もうほら、チュウしてあげるからおいで?好きでしょ?」


「カウンターでの接待は禁止ですぅ」





可愛い反応に満足気に微笑んだ百合は新しいカクテルを口に運ぶ。すると、紳悟が徐ににスマホを取り出した。





「あっ。美夜ちゃん、ちょっとごめんね」


「ええ。気にしないで」

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