第5話

「ごめんね、紳悟ちゃん大好きよ。ところで話戻すけど、そういう訳だから住む所なくなっちゃって困ってるのよ〜。どうしたらいい?」


「俺に聞くとか意地悪だね。……もうさ、いい加減遊んでないで特定の人見つけたら?」


「紳悟ちゃん……とか?」





上目遣いで此方を見つめてくる彼女に紳悟は“うん”と言いかけて言葉を呑み込んだ。この二ヶ月、どれだけ感傷に浸っていたことか。あんな思いはもうごめんだ。


彼女は自分の手にはおえない。


出来上がったカクテルを優雅に喉へ流し込む姿に思わず見惚れてしまう。


紳悟もかつて、百合の美貌に侵され言葉巧みに誘惑された男達の中の一人であった。彼女は自分の魅力をよく理解している。男の下心を見抜いて、悦ばせることなどお手の物だ。それなりに付き合いは長い方なため、彼女に免疫は付いていたものとばかり思っていたが、現実はそう甘くはなかったようだ。


ましてや二ヶ月も放置されたのだから、嫌いになっても少しもおかしくはないというのに、久しぶりの彼女の瞳を見て如何せん胸が高鳴ってしまったのだから重症だ。未練たっぷりな嫌味しか言えなかった。

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