第3話

「いらっしゃいませ……って美夜ちゃん?!」


「紳悟ちゃん、久しぶり〜。元気してた?」


「どの口が言ってんの、それ……」





驚いていたのも束の間、不貞腐れた面持ちで口を開いた男は、この店の店長をしている大原紳悟(おおはら しんご)だ。26歳としながら童顔で、本人は若干気にしているようだが、頬を膨らませているあたり中身も少し幼い。茶髪でパーマのかかったフワフワの髪は犬みたいでとても可愛い。





「紳悟ちゃん、いつものお願い。ソルティードッグ」





子犬が威嚇したところで、痛くも痒くも無い。ニコニコと微笑む百合に紳悟は諦めたようにカクテルを作り始める。





「二ヶ月ぶりだね、美夜ちゃん」


「そうね。会いたかったわよ、紳吾ちゃん」





何も昨日今日の間柄ではないのだが、本名は教えずに店の源氏名“美夜”で通している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る