第17話 「しりたい」



「……う、わぁ!」


 あれから何日か経って、今日はけーごがお友達と遊園地ってところに行く日。夜になって、いっぱいの写真を送ってきてくれた。見たこともない物が沢山写ってて、人間も沢山いた。

 凄い、これが人間の世界なんだ。沢山の人間で溢れてて、こういう建物みたいなのがいっぱいあるんだ。

 なんか、キラキラして見える。


『これが、遊園地。すごい、おもしろそう』

『そう? 良かった。俺、今日はずっと写真撮るのに夢中だったよ』

『圭吾、すごい』

『すごくないよ。カメラが良かったから綺麗に撮れただけで』

『そんなことない。私、この写真も宝物にする』

『そう言ってもらえると嬉しいよ。俺も撮ってて楽しかったし』


 やっぱりけーごは凄い。どの写真もみんな楽しそうなのが伝わる。面白そうだなって思うし、行ってみたいなって思っちゃう。

 ジェットコースターは、高いところからビューンって落ちる乗り物。ちょっと怖そうだけど、ちょっと興味あるかも。

 それから、これは観覧車から撮ったもの。広い世界が一望できる。建物がいっぱいあって、鬼の里とは全然違う景色が広がってる。

 綺麗。なんか、感動。言葉が出ない。


『ありがとう、圭吾。うれしい、うれしいよ』

『大袈裟だなぁ。こんなので良ければ、また撮ってくるよ』

『宝物、また増えるね』

『そうなるようなもの、撮れればいいけど』

『圭吾からもらえるもの、全部宝物。全部大切』

『なんか照れるね。ありがと』


 こういうの見ると人間界行ってみたくなるな。

 凄く興味湧いてきちゃう。大人になるの、なんかちょっと迷ったりもしたけど人間界には凄く行きたい。

 人間界に行くには大人になる必要がある。早く、早く大人になりたい。行ってみたい。けーごの住む、この世界に。


『けーごは、遊園地好き?』

『俺? 俺はどっちかって言うと、静かなところの方が好きかな』

『遊園地はうるさいところ?』

『人がたくさん集まる場所だからね』

『そっか。スゴイなぁ』

『呉羽は人が多いところ好きなの?』

『わからない。でも、行ってみたいなって思う』


 人の多い場所に居たことがないから、好きか嫌いか分かんない。

 でも、沢山の人にあって見たいなって思うから嫌いじゃないのかも。写真見てるだけで、心が飛び跳ねてるみたいにドキドキする。

 いいなぁ、いいなぁ。こんな世界に、けーごはいるんだ。けーごのいる世界、こんなにキラキラしてる。

 私も、ここに居たい。当たり前のように、居たい。


『私、圭吾からいろんなこと教えてもらえるの好き。知らなかったこと知れるの、すごく好き』

『そっか。知識を得るってことは大事なことだからね。そういう風に思えるのは良いことだと思うよ』

『圭吾は物知り』

『そんなことはないよ。俺も知らないことだらけだよ』

『そうなの? こんなにたくさんのこと知ってるのに』

『それだけ世の中には様々なことで溢れてるってことだよ』


 けーごにも分からないこと、沢山あるんだ。人間の世界って本当に広いんだな。

 鬼の里も広いけど、景色は歩いても歩いてもずっと一緒。私、この場所好きだけど、人間界に比べたら随分とつまらない場所なんだなぁ。

 何もない、なさすぎる。

 何も手に入れられない。

 鬼が、孤独であることを里全体で主張してるみたい。


『全部知ることが出来たら、頭の中ギュウギュウになっちゃいそう』

『確かにそうだね。でも、世の中のこと全部知っちゃったら、きっとつまらないよ』

『なんで?』

『だって、知りたいって気持ちがあるから面白いんじゃないかな』

『そっか、そうだね。私、いま知りたいって思えるの楽しい。うれしい』


 知りたい。けーごに会ってそんなことばかり考える。

 人間のこと、この人間の住む世界のこと。

 大人のこととか、自分自身のこととか。


 けーごのこととか。



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